製本の歴史

製本術は比較的新しい技術でヨーロッパ周辺において西暦15世紀前後専門家の手で 造本されるようになったものである。それまでの書物は記録を保存するための方法として工夫されたものであった。

古代の人が記録したものを保存しようと考えはじめたのは紀元前30世紀頃でメソポタ ミア文明、ウル王朝の頃作られた粘土の書板が最初とされている。これは粘土に文字や絵画を刻み込み日陰で乾燥して書物の代用としたものである。

一方エジプトにおいては、パピルス草を並べ叩き継ぎ合わせたパピルスの両端に軸を付け巻物とし円筒に収めたものが発見されている(紀元前30世紀頃から)。同時に羊や 山羊の皮に適当な処理をしたパーチメント(羊皮紙)と呼ばれるものや、木の板をくりぬき蝋を流し込んでその上にスタイラスという先のとがった金属製のペンで文字を刻みこれを革紐で綴じ合わせた蝋板が使用されている(西暦1世紀)。

紙は西暦2世紀初頭、中国において”蔡倫”が樹皮より作ることを発明した。この技術は西暦7世紀日本に伝わり、改良され和紙となった。 西欧には西暦11世紀スペイン、イタリアに入り西暦14世紀頃ドイツその他の西欧諸国に伝承され西暦15世紀に機械的製法が確立される。

15世紀の中頃、グーテンベルグにより印刷術が発明され、それまで僧侶によって装丁 が行われていた造書術が、専門家の手によって作られるようになり、15世紀終わりか ら金箔装丁や天金、三方金、マーブルが行われるようになった。

16世紀頃から表装材料として皮革だけでなく絹布、ビロード、帆布が用いられるよう になり、19世紀初頭にはイギリス人ジェームス・レオナルド・ウィルソンによりクロスと呼ばれる造本専用の素材が考案され、これに箔押しする方法が広く用いられるよう になった。

和装本は書写や印刷した紙を適当の長さに継ぎ末尾に軸をつけた巻子本(かんずぼん) からはじまり、袋綴とよばれる和本の代表的な様式が広く用いられるようになった。中身と表紙は一括して綴じられるので堅牢な三日綴、大和綴、高貴綴などがある。また最近洋本様式の手法をとり入れた改良綴がある。

日本における洋本様式は明治の初期に西欧文化とともに輸入され、急激に一般化し、現在製本といえば洋本のことを指すほど常識化している。 このように製本の変遷をみればわかるように、手工業的な経過を経てきているので、わが国においても最近まで、製本 業界は職人的誇りと、折、下拵えなどの手内職によって支えられてきている。

近年、随時部分的な機械化が行われてきたものの出版物の製作時間の短縮化や需要の増加にともない、製造工程のライン化、コンピューター管理化等によりより一層の高速、 高品質に向けて発展している。